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日が落ちかけた頃、長屋の壊れかけた戸を気をつけながら開ける。
「米爺、終わったよ」
「おぉ早かったなぁ。あまり渡せなくてすまないがまたよろしくな。これ婆さんから、持ってけ」
「ううん、助かるよ。いつもありがとう」
米蔵こと米爺は本当のじいちゃんのようだ。
1枚の小銭と竹の葉に包んだ握り飯らしきものを渡してくれる。
皺だらけの目を細めて頭を撫でてくれるから、この人の前では年相応に戻れた。
照れくさいけど素直に嬉しくて笑う。
古くからここに住み、俺たち家族をよく知ってる人だ。
婆ちゃんと一緒に畑を耕し市場に売りに行って生活をしてるけど決して余裕はないはず。
「仕事」と称して助けてくれてると気付いていたが爺ちゃんの気持ちを有り難く頂いていた。
「でも、このままじゃ駄目だ」
食うに困らぬ程度に稼ぐ大人になるには時間がかかる。
周囲で助けてくれてる人達は決して裕福な家庭ではないのに…無理させてしまうのは心苦しかった。
昼間会ったおっさんの言葉を思い出す。
性に会わない世界だと無視するつもりだったが他に方法は無い。
町に向かう道へと視線を向けた。
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