第1章

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 彼女たちは見ていて飽きなかった。気づかない間に時間は過ぎて、もう少しの間、もう少しの間。この家族を見て、この家族の事を知りたかった。  もう夜も更けてきた。  アイとウエオはきっと心配しているだろうか。いや別に構わないだろう。ハゲやタンクトップよりも遥かにこの家族を見る方が楽しい。  だがおかしいのは、まだ父親という存在が帰ってこないことだ。不思議だった。もう時間は10時を回る。カエデの欠伸も増えてきた頃だった。  すると母が「眠いのでしょう」と声を掛ける。カエデは頷いた。  母はそっとカエデに寝るように促せば、カエデは自分の部屋に籠ってしまう。部屋の照明は付いていない。母は顔を覆うようにテーブルに俯いていた。  カキはその正面に座る。静かになったこの家庭は正直楽しくなくなった。 「帰ろうか。良い収穫だと思うし」 カキは席を立つ。  小屋に帰れば、今日の事を二人に話そうと思っていた。しかし二人は寝ていた。  寂しいが、まぁいいだろう。
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