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3
朝はいつも以上に暖かかい。なんでも今週はとても春らしいそうだ。
「じゃあ行ってきます」
「はい。行ってらっしゃい」
カキは早起きのウエオにそう言って、今日もまたあの家族を見に行こうと思っていた。
「本当に行かないの。お花見」
「行きませんよ。ウエオさんの頭に花が咲いたら見に行きます」
「そうかい。アイ君の頭の中身にお花畑ではダメかな」
「いつもお花見してますから。むしろ枯れたら呼んでください」
絶えないアイへの侮辱は収まりそうにない。寝ているから悪いと言わんばかりに二人は畳みかけていた。これではらちが明かない。終止符を打ったのはカキだった。全ての話を切り「じゃ」と唐突に言うと、ウエオもまた「うん」と見送った。
また来てしまった。
まるで自分の家のような気分で、いやその気になって入ってみようか。
「ただいまあ」
だらっとした口調でそういう。
返事はないのは当たり前だが、今日は少しだけままごとをしたい気分だ。
「お腹空いたよ。今日のお昼ご飯は何ですかね」
すると、キッチンから食事が運ばれてくる。それも2人分。いい具合にままごとが進む。
「あれ、カエデ、学校は」
「カエデ、起きなさい」
母は叫んだ。今日は休日と理解する。
カエデは千鳥足で戸を開けて出てきた。ぼっさぼさの髪が笑いを誘う。我慢すればするほど腹筋が壊れるほどだった。そしてカエデはカキの上に座った。
見事なほど身体が被る。
「眠れなかったの」
「寝たよ
「お花見、行けそう」
「行く」
どうやら彼女たちは今日花見に行く予定らしい。なんという偶然か。カキもまた頭を抱える。
「お父さんもお花見好きだったものね」
母は苦しくなるほど重い雰囲気に意味深な言葉を言った。中でも『だった』というのが気になった。まるで死んでしまっているかのようだ。
「お父さんの写真持っていこうよ」
「そうね。お父さん。喜ぶね」
二人は準備を始める。
どうやらカキが来る前に母は準備を粗方終わらせていたらしく、風呂敷に包まれた2つの箱はきっと弁当だ。
さらに、母は引き出しからもう一つ、写真を弁当の上に置いた。
娘の要望通り、父の写真だった。
「ああ」
頭に花が咲いている。だが予兆はこの頃から始まっていたのか。このハゲは。
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