no.1

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F.O.Pはシオンに呼ばれて、麻布にあるクラブへと向かっていた。 日本でシオンに仕事以外で声を掛けられるなんて事は珍しい。 『何事だ?』F.O.Pは首を傾げた。 日本での番組収録も終わり、ヤンべとレソンは早々に韓国へと帰っていった。 ユンリはまだ日本にいる様だが、どこに居るのかは詳しくは知らない。 F.O.Pは2,3日はゆっくりと日本の美術館や友人の工房を見学し、日頃の疲れを癒そうと思っていた。 このゆっくりと…と言うのが肝心なのだ。 しかし、これからF.O.Pが向かっているのは、癒しとは真逆の混沌とした空間だ。 もっとうんと若い頃は、その如何わしく欲望に塗れた熱い空間が楽しくて仕方がなかった。 弾けるような爆音と酒、煙草、男女の汗の交わり。その場に居るだけでも、ハイテンションになれたものだ。 年をとったのか? いや、年はとったが、俺はまだ20代だ。老け込むのとはまだ違う。 周りは「落ち着いたんだよ」と言う言葉で済ませているが、果たしてそうなのだろうか。 煌びやかなネオンの明かりを車内から眺めながら、ぼんやりとそんな事を考えていた。
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