no.1

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まだ時間が早いせいか、客は疎らだった。 F.O.Pは初めて訪れる店の内装に興味を持ったが、スタッフに促される様にシオンの待つVIPルームに案内された。 着くなり上機嫌なシオンがシャンパンを片手に迎えてくれた。 シオンの横には柔かな笑みを浮かべる青年が座っている。 その青年を一目見た瞬間、F.O.Pは『綺麗だ』と心の中で思った。 曲がりなりにもparadigmのビジュアル担当として、自身の美貌には絶大な自信を持っていた。 そのF.O.Pの美貌さえも、その青年の前では何の意味も持たないのではないかと思われた。 ハーフなのだろうか? 若干目の色がグレーがかっている。 白い肌の下にうっすらと見える青い筋、ブラックライトに照らされて、彼の白さが尚一層際立っていた。 唖然と立ち尽くすF.O.Pを見て、どこか満足げにシオンが口を開いた。 「ヒョンに来てもらったのは、彼を紹介したかったんだ。ヒョン、彼はアレン。super sonic のボーカルだよ」 super sonic…聞いたことがある、確か…F.O.Pが話しだそうとする前に、シオンに紹介されたアレンがF.O.Pの前に身を乗り出してきた。 「よろしく! 俺はアレンです」 びっくりした事に、上手くはないが韓国語を話してきた。 握手を求めてきたその手も白く美しい。 「どうも…F.O.Pです」 が、握りしめた手はやはり男の手。幾分骨ばっていてガッシリとF.O.Pの手を包んだ。 F.O.Pはシオンの前に腰を下ろすと、シャンパンが注がれたグラスを手に取った。 「シオンがこっちで連絡してくるなんて珍しいから、何事かと思ったよ」 「ごめーん。ヒョンにも都合が色々あるだろうと思ったけどね。どうしても紹介したくてさ」 シオンはお得意の茶目っ気たっぷりの笑顔を見せた。 実際、アレンは魅力的な男だった。 話題も豊富で、冗談を言って皆を笑わせた。育ちも良いのだろう、立ち居振る舞いからどこかしら品があった。 そして、惹きつけてやまないのはやはりその美貌である。嫌味のない美しさ。 おそらく生まれたままの顔なのだろう。 paradigmのビジュアル担当と言われたF.O.Pでさえも、多少の手直しはしていた。化粧を乗せることで、より一層F.O.Pとしてのオーラを引き立たせるのだ。 しかし、アレンにはそんな手管は一切必要ない様に感じられた。 シオンはそんなアレンを羨望の眼差しで見ているのがF.O.Pには気になった。
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