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俺はおっちゃん課長に訴える。
「聞いてください、課長。
俺、これから大魔王退治に旅立つというのに
会社の支給品がこれだけしかくれなくて……」
しぶしぶと俺は泣きながら
支給された薬草一つと500Gを課長に見せた。
ついでに、装備していた頼りない木の棒の武器と
いかにも事務のおばちゃんが手作りしたであろう
皮の鎧の装備も課長に見せた。
課長のことだから、
きっと社長から素敵な支給品をもらっているに違いない。
俺はそう確信して課長に尋ねた。
「課長はどんな支給品をもらったんですか?」
おっちゃん課長はぽつりと真顔で答えてきた。
「そんなモンない」
「……え?」
「ベテラン・クラスになると支給品は常に現地調達だ。
俺は何ももらえなかった。
もらえるだけ有難く思え。お前の時代はまだ楽な方だ。
俺の新人時代は──」
課長が遠い目をして過去を語り出す。
俺は心がきゅっと締め付けられるように痛んだ。
(そうか……。
俺、まだマシな方だったんだ……。)
同時に俺はなんだか泣きたくなって空を見上げた。
とてもきれいな茜色の夕日が
お空に輝いていた。
2020/07/19 10:20
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