幸せの極み執事

2/20
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「この! 恩知らずが! うちの真理亜(マリア)から離れろ! 屋敷から出て行け!」 するどい怒声と共に、燕尾服を身にまとった男が老人に殴り飛ばされた。老人といえどその顔はいかめしく、割腹もいい和服の男だ。 男は屋敷に仕える執事だった。殴られた彼の傍にいたのは若く美しい女だった。彼女の名前は真理亜。真紅のドレスワンピースを見にまとった、艶やかな黒髪の持ち主だった。 この老人、屋敷の主人である弥彦(ヤヒコ)の娘だった。娘といえど真理亜と弥彦の年の差は50ほどある。亡くなった奥方が遅くに産んだ子だった。 殴り飛ばされた男は蓮司(レンジ)。住み込みで働く執事だった。真理亜が泣きながら、蓮司に杖を振りかざす弥彦を止める。 「お父様やめて! 蓮司さんは悪くないの! 私がいけなかったの!」 弥彦は真理亜の頬を叩いた。真理亜の瞳から涙が溢れる。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!