幸せの極み執事

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今日弥彦が予定より早く帰宅すると、使用人の蓮司と娘の真理亜の姿が何故か屋敷のどこにも見えなかった。 不思議に思って弥彦が探すと、2人は地下の薄暗いワイン貯蔵庫の中で抱き合っていた。 その現場を弥彦が押さえ、蓮司のことを殴り飛ばしたのがさっきのことだった。 父親に頬を張られ、ワイン貯蔵庫の床にへたり込み泣きじゃくる真理亜。その隣で蓮司は己の主人である弥彦に向かって、這いつくばって頭を下げた。 「旦那様、申し訳ございません! 恩をアダで返すような真似をしてしまいました」 床に額をこすりつけるように詫びる。そんな蓮司の髪を弥彦は鷲掴みにし、彼に顔を上げさせた。 「……使用人の分際で何を考えている。自惚れるな! お前の父親には生前この家で尽くしてもらっていた。だからお前もこの家にいる……。それも今日限りだ。以後1度でもこの齋藤の屋敷に顔を出したら殺してやる」 「違うの……! 蓮司さんは悪くない。私から迫ったの……」 真理亜の言葉は聞かず、弥彦は蓮司を睨みつけた。真理亜から迫ったことなど弥彦はわかっていた。自分の娘が、同じ屋敷で暮らす執事に目を奪われていることは気がついていた。 だから先週、19歳になったばかりの娘に弥彦は早々と見合いをさせた。
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