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ゼロが拒絶していることは明らかであるのにも関わらず、イルは全く怯む事無く近付いて行く
流石のゼロも、全く揺るがないしっかりとした歩調で近付いてくる事は予想外だったのか少し後退りした
しかし後ろに立っているインヴァネスに直ぐに背中が当たってしまい、イルから距離を取ることが出来なかった
イルがゼロとの距離を縮める度にゼロの殺気は強く鋭くなっていく
ゼロは自分でも何故こんなにイルの事を警戒しているのか分からなかった
それでも、彼に近付いて欲しくないと思う気持ちが本物であることは明らかだった
動揺を何とか押さえ込んで顔を上げる
こんなにも殺気を向けているゼロに微笑みかけるイル
ゼロには彼が一瞬二ノ宮と重なって見えた
ゼロの殺気が静かに消え失せた
彼とて人と同じ様に感情を持っている
たとえ人でなくとも、長い時を生きていようと、感情は無くなるものではない
今までいくら気丈に振る舞っていようと、いきなり異世界に飛ばされて何も感じない訳が無いのだ
「に、の、みや...」
小さくぼんやりとした瞳で呟いたゼロ
たった一人の心を許せる者もいないこの世界
本当は帰りたくて仕方がなかった
二ノ宮と穏やかな時間を共に過ごしていたかった
感情と共にabilityが暴走しそうになったその時だった
ぽん、と頭に小さな重みを感じたのは
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