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ハッと我に返ったゼロの目の前にはイルが優しい笑顔で佇んでいた
頭にはイルの手が乗っている
その手がゆっくりと頭を撫でた
大雑把そうなイルの見た目に反した壊れ物を扱うかの様な繊細な手付きで、ゼロの頭を優しく撫でる
「お前の歳なんざ知らないが、そんな警戒しなくとも大丈夫だ。インヴァネスの使い魔になったんだろ?ならお前も俺の子供同然だな。なんかあったら俺を頼れ。力になってやるよ。」
頭を撫でられる事など何時ぶりだろうか
もう何百年も前だった気がする
人と触れ合う事すらずっと前からしていなかったゼロは久し振りに他人の体温を感じた
それはとても心地のいいもので、気がつけば目を閉じてイルの手を受け入れていた
素直にイルの事を認めるのがなんだか癪だったゼロは少し眉を寄せながら口を開いた
「お前は300を越える年月を生きた者までも子供扱いするのか、イル」
照れ隠しで言ったゼロの憎まれ口にイルは目を見開いてゼロを凝視した
「さ、300年以上生きてんのか、ゼロは。その見た目でか?インヴァネス達と同い年程にしか見えないのだが。」
小さな声で、確かに武術の達人ではあると思ったがそんな長生きだったとは…と呟いているのが聞こえた
ゼロは小さく溜め息を漏らした
少し心に余裕ができたため、今まで気にしていなかったこの部屋を観察してみる
先程は全く気がつかなかったが、この部屋には高そうな置物が幾つも置いてある
此処で暴れようとしたことをゼロは少し反省した
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