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「なぜ空欄になっている?名前は書類に書いた筈だが。」
カードを渡してきたイルを見るとゼロは疑問をぶつけた
ゼロの疑問にイルはバツの悪そうな顔で頭を掻きながら答えた
「いや、筆跡がわかるようにそこは自分で記入するんだ。まあ、名前のサインが読めない文字だったってのもあるんだけどな。なんて書いてあるのか分からなかったぞ。」
そういえば、自身の世界の文字で名前を記入した気がする
久々の本名に少し懐かしさを覚えたためだ
あくまでゼロというのは自身の強さの値であって、名前では無い
世界で1人しかいないためそう呼ばれていただけだ
当たり前のように本名を呼ばれなくなったのはいつのことだっただろうか
自分でも思い出すことは出来ない
だが、何故か自分の本名を知られていないことに安堵した
本名を呼ばれないことに安心したのだ
今でも本名を知られたくないと思っている
だからわざわざ"ゼロと呼ばれていた"と名乗ったのだ
今、生きている者で本名を知っているのは二ノ宮だけである
それだけゼロは彼のことを信頼していたということだろう
主と言えどインヴァネス等に本名を教える気など更々ないゼロはイルの言葉に何も答えなかった
淡々と名を記入すると、ギルドカードをどこかへと仕舞った
まるで手品のようにスッと消えたカードに、またもや女の子二人が目を輝かせていた
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