十三番目の悪い魔女

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 ――目覚めた少女は、再び絶望した。  確かに町は近代化が進んだ。魔女の町は魔女の国へとなるほどに。けれど魔法もそれにあわせて進化していた。  もっと便利に。とすべての力は強くなった。求められるものも。もちろん、悪い魔女にも。  「おはようございます、そしてはじめまして叔母様!」  自分とそう歳の変わらないような女の子にニコリと微笑まれ十三番目の少女は泣き出したかった。  姉は外見こそ若いままだけれど普通に大人になって、私は知らない間に216歳のおばさんになっているなんて。こんな事なら普通に過ごせばよかった。泣き出したい彼女に愛らしい笑みを浮かべたまま目の前の子は追い打ちをかける。 「早く悪い事をしないと、お仕置きされちゃいますよ?」  今のこの国では、自分の役割がある魔女にはノルマがあって、それを達成できなければ処罰を受けるのだと姪っ子である彼女が教えてくれた。  寝ている間は免除されていたけれど起きていればそうはいかない。しかも人を転ばせる位じゃ認められない。  眠らなければ小さな事から慣れて行けたかもしれないのに、いきなり結構な悪を求められ少女は困惑した。  そして、逃げよう。と思った。  魔法で色々見られているから、完全に逃げ切る事は出来ない。  けれど全然違う場所でする悪事の方が罪悪感が少なそう。知っている人に何かをするよりは。  そう考えて、そうだ魔法の無いところへ行こうと決めた。魔女の国は他の国と目には見えない境を置いていて、その存在は他ではあまり知られていない。だからそんな場所はたくさんある。  他人に姿が見えなくなる魔法を自分にかけ、魔法をかけた物置のドアを開くと、見知らぬ道へ出た。  見慣れたレンガの道路ではなく灰色の無機質な地面だった。
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