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「本物よ!甘く見ないでよね坊や。私これでも216歳なんだから。何でも知ってるわよ、あなたの頭も丸見えだしね」
ふふんと箪笥の上に座って見下ろしながら言ったが、『……ちょっと頭が残念な人かな?』とか思われ苛立ちしか覚えないので彼の心を読むことを止めた。
「鏡見て!それで自分や周りの頭がおかしくなったか、私が本物か決めなさい」
促されるままに細い姿見に自身を映し、少年の喉はヒュッと音を鳴らした。
「これ幻覚とかじゃないから、魔法よ、魔法。見えないように見えるんじゃなくて私の眼以外に映るあなたの姿を全部消したの」
人の目にも反射するもの全てにも、写真にもその姿は映らない。だからいなくなったのと同じでしょ、と少女は言った。
「消えたようで、でも消滅はしていないからあなたの願いは叶えていないわ。でも消してる事には変わりない。だからWで悪事が働けた!」
やった!これで暫く悪い事しなくてもいいかも、と笑う彼女に少年は告げた。
「折角喜んでるところ悪いけど、僕が消えても特に困る人いないから悪事はそんな働けてないと思うよ」
「……急に姿が見えなくなったら誰かしら困るでしょ?家族とか友達とか」
少なくとも自分はそう。両親も姉も、今だったら姪っ子も気にかけてくれると思う。悪い魔女だって、家族に変わりはないのだから。それに友人たちもそうだ。目が覚めた時こぞって顔を見に来てくれた。
「僕友達とか居ないし、親は仕事で海外行ってるからさ」
一人もいないの?二人とも海外?との少女の問いに、一人も。片親だから。と彼は答えた。さらに、明日休みだし学校無いしね。とも付け加えた。
最初は驚きもしたけれどもう落ち着き払っている少年に、少女はこんなはずじゃなかったのにと後悔し始めた。
「あなた自身はどうなの?いきなりこんな事になって。誰にも認識されないのよ?さぞかし困るでしょうね?」
「そんなにも……家に食べ物結構あるし、ネットで頼んで宅配ボックスに誰もいない隙に取りに行けばいいだけだし。明日戻れなくても、まあ病欠って事にしとけばいいんじゃないかな」
予想外の反応を返されて焦る少女は自分でもよくわからないまま口を動かす。
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