十三番目の悪い魔女

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 さてそれじゃあ、まず誰にするのか。少年の取り出した写真で標的を確認する。 「……同じ服で似たような髪形に顔もこれじゃ小さすぎてわからないんだけど」 「しょうがないよ、集合写真ぐらいしか持ってないから」 「じゃあ、ついてきてよ」  どうせなら現場も見てスッキリしなさいよ。という言葉に少年はえっ、と嫌そうな顔をする。 「大丈夫。だってもう一回鏡を見て。服さえ脱げば何にも解らなくなるわ」  透明じゃない。と言われ、ああ確かにと彼も納得して支度を始めようとする。  けれどすぐに考え直した。 「あれ、もしかして君には見えてる……?」 「当たり前でしょ、私が術者よ?」  その返事に、シャツのボタンにかけていた指を外した。 「何?恥ずかしいの」  ふうん?とイタズラを思いついた子供のようにニヤニヤとした笑みを浮かべる。 「だってそんな、女の子の前で……っていうかずっと?」 「服だけ浮いている方が不自然っていうか異常でしょ。それに私こう見えても216歳だってば」 「でもそんなバ……おばあさんには見えないよ、本当」  まあ、彼女自身にも眠ってた+200歳分の自覚なんてない。見た目も中身も実質16歳だ。でもここは年寄りぶってみた方が良さそうだと思って主張してみただけだ。 「いいから、脱ぎなさいよ」  抵抗を続ける少年に苛立ちながら急かす。 「その辺にある映画に透明人間が主人公のあるけど、あいつら全員全裸だから。そう珍しい事じゃないから。気にしなくていいじゃない」  少年の部屋の本棚に並んでいるDVDを指でつつきながら言う。ジャケットを触るだけで、彼のその映画に対する記憶を読み、おおまかなあらすじを知る事が出来た。普通の人間が透明人間になったとして、物語を進めるには必ず全裸になっている事だろう。  人は透明になったならまず、服を脱ぐものだ。少女はそう主張した。 「……わかったよ。でもあんまりこっち見ないで」  しぶしぶ少年は脱衣を再開する。ようやく少女以外の目に映るであろう怪奇現象は無くなった。
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