十三番目の悪い魔女

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 いざ外に出ようとした時、ふと少年が疑問を口にした。 「あれ?君の姿も他の人には見えていないんだよね?」 「そうだけど?」 「でも服、着てるよね?それも見えていないの?」 「当たり前じゃない。私なんて空飛ぶし」  空飛ぶマント、なんて見られたらとんでもないでしょ。と少女は事も無げに言い放つ。 「じゃあ僕の服も見えなくしてよ」 「……ごめんね、私、服ごと見えなくする魔法を他人にかけると服が癒着しちゃう事あるから」  嘘か本当か、悪戯なのか俯いて表情の伺えない少女の声色からは何も読み取れなかった。 「でも裸足だとかわいそうだから見えない靴貸してあげるね」  言うと同時に杖を振ると、何かがはじけるような音がした。 「……見えないんだけども」  少年の目には何も映らない。見えないのだから当たり前だ。 「しょうがないから履かせてあげる」  にまーっとしながら少女は少年に迫った。「遠慮します」と素足で外に出る事と天秤にかけて拒否するが彼女は一向に引かない。  普段より今の方がある意味地獄だ。少年がそう思った時間が数分続いた。少女にとってはさっきの苛立ちを晴らせてすっきりした時間だった。  そして再び家を出る前、また少年が尋ねる。 「そういえば君、名前なんて言うの?」 「……アメリア」  愛される者という意味だと小さい頃に両親から聞いたその名前を、彼女は嫌いではないけれど悪い魔女にそんな名前……と素直に好きでいられないでいる。 「いい名前だね?」  本当は意味とか何にも知らないけどとりあえずそう言ったであろう褒め言葉に、適当な事を言うなと少女が返す。 「……僕はマナトって言うんだ。愛する人って書く」 「そっちこそ、いい名前じゃない」  字面を知らない彼女は心からそう言った。「そうでもないよ」少年が返す。お互いに相手の悩みを知らずに、いまさらながらの自己紹介が終わった。
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