《第1章・オネエ協定?》

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舞の出勤はそれからそんな様子で相川は彼女をアサヒコーポレーションまで送っていく朝が続いた。 『舞そんなうつろな目をしてちゃんとご飯食べて眠ってる?仕事に支障出るんじゃないの?』 『んー…』 『舞ってば…』 『うん…』 『ブラウス脱がせちゃうわよ?』 『んー…』 おかしいおかしいわよ、舞が… 相川は信号待ちに舞のタイトスカートの膝丈に沿い左手を這わせたが、彼女からの反応がないのに怪訝な表情を浮かべ手を離した。 『スカートもう少し短めが良いわね、買ってあげる』『ん…』 おかしいわ絶対! ビンタも罵声もない… … …… 会社の前に車を停め彼女を見ると降りるどころか心ここに在らずな無表情で前だけを見ていた。 『舞ってば会社着いたわよ、アサヒコーポレーション』 ハッとしたように我にかえったかのように降りるが、また忘れ物をしている。 『制服にバッグにお弁当…しっかり前を見て歩きなさいよ』 あぁ1人の女にこれ程振り回されるなんて… 次の原稿のプロットも考えなきゃならないのに… 編集部にも寄らなきゃ… 舞あたしって忙しいのよ、毎朝こんな調子で心配ったらないわ… 【仕事に支障出るんじゃないの?】 相川の指摘予測のとうり舞は度々上司に呼ばれ注意やプレゼン資料のやり直しをうけていた。 『舞?舞ってばっ』 優香や孝典も相川同様心配し世話をやいて。 『相川さんサイン会後は何か予定入れてます?』 『………』 『相川先生っ……相川先生っ?』 『あっ…何?』 『《恋わずらい》のプロットですか?だけど今は打ち合わせ中、ミーティングに集中して下さいよ』 指摘のとうり腕組み・眉間にシワを寄せる相川克哉がいて。 『中谷さん彼スランプ中なんですか?』 『ううん、書籍後半に載るキスシーン失敗描写等リアルでおもしろくて読者評価も良いくらいノってるけど…私生活がどうもリアルな恋わずらいらしいんだ』 『先生30歳ですよ?』 『女っ気がなかったからね』 『あぁ業界では有名な女嫌い…』 聡と男性は彼の反応を見たが、先ほどの相川が溜め息をついただけになる。 不安定な舞や相川の心配種の○月○日、週末の土曜朝早く舞は部屋を出ていた。普段ならまだ布団の中で2度寝しようか迷う8時前になる。 相川は9時にチャイムを鳴らすが居るはずもなく。 波乱な1日が始まろうとしていた。
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