《第1章・オネエ協定?》

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ビリッ‥ ニート隣人が舞のTシャツを掴み左肩部分を破っていた。 ひどいっ!ひどいひどいっ! 彼女の震える手からベルトさえも奪い取り隅へと投げた為に、唯一身を守るモノがなくなり恐怖心が大きくなる。 隣人ニートは反対側をも破こうと生地を掴んだ。 ビリッ‥ ブルーの下着がチラチラと見える為に恐怖心より憎しみに変わる。 『あんたは女の敵よっ』 『ヤってやる』 負けない…あたしこんな奴に負けない… その時宅配便のトラックが隣の部屋のチャイムを鳴らした。 『○×さーんっ、居ないんですか~?』 宅配業者その声に反応した隣人ニートは待ってましたとばかりに返事をした。 『留守じゃないっ』 居なくなった! なりふり構わず舞はバッグを掴み部屋から出て走り出した。 優香優香優香… 河田さん…お母さん… アパートを出る前イケイケ女が車から怒鳴っていた。『長谷川さん部屋はきれいになったのっ!』 知らない知らない知らない知らない… アパートから30メートル離れた頃携帯が鳴った。 相手は《相川克哉》! 初めてかかる電話にいつもの舞だと嫌な顔をするに違いなく出たかどうかも「?」がつきそうだが。 心ぼそい彼女は歩きながら舞だと名乗っていた。 『舞?様子がおかしかったから気になって…泣いてる?』 『ん…』 『どうしたの?何処にいるの?』 『引っ越しする前のアパート…会いたくないニートに捕まって…』 『なんだってっ!』 舞の引っ越し事情を舞から聞いていた相川の緊張が伝わるようだ。 『今話せるの?捕まったなら無理じゃない!?』 『危ないところに宅配便が来て隙をついて部屋から飛び出して逃げてる…』 『迎えに行くからっ!アパートから遠く離れた安全な場所にいなさい』 『相川さん…相川さん相川さん…』 『どうしたの?隣人に見つからなければ大丈夫だからね…舞ちゃん…』 『相川さん相川さ~ん…』 イケイケ女が車から降りて追ってくるヒールの音に舞はまた走りだした。 『相川さんあたし怖い…』 相川は書店堂控え室から車のキーを掴みドアを勢いよく開けた。 『克哉?』 『聡、第2部までには帰るっ!』 『克哉っ!』 時間は午後3時を10分過ぎた頃になり、サイン会に登場したスーツ姿の相川克哉が血相を変えて飛び出した。
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