《第1章・オネエ協定?》

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サイン会第2部が始まろうとしている午後5時、相川の車が右折して駐車場に入る様子を出版社スタッフが待っていた。 『相川先生帰ってきた!』『始まっちゃいますよっ』等と彼らは腕時計を見ながら“早く早く”と言わんばかりに手招きのジェスチャー。 『悪い…ミネラルウオーターだけ飲んだら行くから』舞が降りるのを確認した上で相川は、スタッフを見ながら車をロックした。 A書店堂の控え室。 『長谷川さん…』 やっぱり‥相川が彼女の元に向かったなら連れてくるだろうと予測出来たから、聡はそれ以上言う事はなかった。 『中谷さん相川さん、あたし…やっぱりここにいては迷惑…』 椅子に座りうつ向く彼女は、彼女らしくなく頼りなげに見える。 『1人きりでマンションに居たくない‥って言ったのは舞でしょ。 迷惑じゃないから居れば良いわ』 髪の乱れをブラシで整えながら、鏡に映る彼女に向けて言う相川。 聡はそんな相川を上から下まで見て、彼の背中をポンポンと軽く叩いた。 『まったくヒヤヒヤさせてくれる、時間だ』 『わかってる』 控え室からかすかに会場の《音》、司会者は第2部が始まった事を伝えると会場からは拍手さえ聞こえる。 『舞…』 フッと笑う相川の優しい笑顔に舞はハッとする。 『舞がそこにいるなら安心して愛想振りまいてくる』『相川さん…』 会場は第1部と変わらないくらいほぼ指定人数いっぱいのお客がいた。 『相川克哉先生登場ですっ!』 キャー‥っていう歓声があがり先ほどより大きな拍手で、相川は嬉しそうに手をあげた。 『お待たせしちゃってすみません。 今日は来てくれてありがとうございます』 聡は会場・相川を見て安堵し控え室へひきかえし舞に話しかけた。 『控え室に1人きりは寂しくないですか? まさに《恋わずらい》、長谷川さんがそこにいるから克哉は第1部より笑顔でいられる。 横顔しか見えないけど隅で見ていきませんか?』 『でもあたし…何も…』 『気にするなら後日アイカツ本を買ってくれれば良いんです。 今度はリサイクルショップに出さないよう(笑)』 聡と舞が見ている中でサイン会はすすめられていく。 相川さんありがとう… 仕事の合間に脱け出してまであたしを… ありがとう… もう少しあなたに対して優しくなろう…
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