《第1章・オネエ協定?》

2/32
前へ
/32ページ
次へ
聡が言うようにアイカツのキスシーンは彼女に迫り告白をし抱き上げキスをした瞬間…の作者自身のフィクションとして載せられ月刊の表紙に「担当押し!リアルな展開!あぁちょっと可哀想っ!《恋わずらい》」とアイカツの文字の隣にキャッチコピーが書かれていた。 スッタバに入ってくる舞を見て中谷は手招きをする。『あなたもなかなかやりますね(笑)編集部で笑わさせてもらいました』 『はっ?』 『訳は昨日発売された月刊雑誌を見てもらえるとわかります』 会話は舞がコーヒーとクロワッサンを持ってきてからも続いた。 『〆切ギリギリでキスシーンだけであんなに悩む克哉は初めてで…正直本になるまでの作業が間に合わないかと思いました』 『なんであたしにそれを?』 『克哉が悩んでた、想いを伝えるシーン壁に手をついて喋るのではよくある話なんでダメ出しをしました。だけど、無理やり抱き上げてキスを迫りながら伝えるなら…コレでしょう』 『あの…』 『笑った後僕はすぐにオッケーを出し、克哉は直しも含めキスシーンから3時間かけて執筆し印刷にも間に合って。 あなたは克哉の良いアドバイザーです』 雑誌を読んだらわかるって? 舞は会社帰りに駅前の馴染みの本屋に行き平台に並べられた月刊雑誌を手にし、巻頭のアイカツ作品をパラパラと読むよりは眺めていた。 『あっ!』 彼女は声を出し慌てて周囲を見渡し、数人から見られている事に恥ずかしくなり雑誌を置いた。 『《告白を受け彼女は彼の頬を大福餅のように掴んで…むに~…と》 これはあの夜のままじゃない』 また周囲を見渡して買わずに本屋を後にした。 『あたしはあなたのおもちゃでもなく、小説のヒロインでもないんだから』 『まくし立てないでよぅ、聞こえてるから。 舞の許可なくあのシーン書いちゃって悪かったわ。 ごめんね、舞ちゃん』 【ごめんね、舞ちゃん】 それがやけに優しく響き怒る気持ちも失せていく。 『感想がネットでも書かれててあのシーンがおもしろいって反響が続々と。 舞のおかげ、ありがとう。またブラジャーを飛ばしてね、取ってあげるから』 『オネエ協定は?』 『はいはいNGでした。 来週サイン会があるけど舞の事は言わないでおくわ』『当たり前よ、ごめんだわ』 河田さんの耳にでも入ったら嫌だもん… だが舞の思わくよりも逆に事は運んでく事になるとは知らずに…。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加