《第1章・オネエ協定?》

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助手席で窓からの景色を見ながらそう答える舞、横断歩道を行き交うカップル達の腕を絡め歩く様々なツーショット。 信号が変わるとアクセルを踏み先ほどよりも加速する相川。『舞が傷ついている時にツーショットなんか見たくないでしょ』 『相川さんいいの…』 『河田は舞があのアパートに行ってた事を知ってはいない…ね?』 そうでなきゃサイン会に来るはずがない…ーー! 舞が可哀想っ! 『仕事終わった頃に電話してもなかなか出てくれなくて…諦めて…だから今日の事は話してもいない』 『舞…』 あいつ! 気にいらない! 『いつから河田に対して気持ちあやふやなの? 河田河田って嬉しそうに話していたのに』 『電話をかけるのはあたし…会社のロッカールームなのかいつも誰かと一緒であたしよりその人達を優先して…メールすら一言で素っ気なくて。 だからだんだん不安になって寂しくて想っても反応が返ってこなくて…。 これじゃつき合ってるって言えないんじゃないか?って…。 今日…仕事中出られなくても仕方がない。 だけど休憩くらいするわ、そんな時に折り返し電話くらい…。 優香や相川さんの電話があって1人きりで待ってて…その瞬間かもしれない』 『今日?』 『つらい時にこそ考えちゃって…好きになるのも一瞬、気持ちわからなくなるきっかけも一瞬で…』 『舞…きっかけが今日だなんて』 舞が可哀想… 舞が可哀想っ! ここ何日か舞の様子がおかしかったのは引っ越し手伝いのせい! 舞は行きたくなかったに違いない! ついていれば! 舞の側についていれば! … …… ……… それから1時間後。 マンションのエレベーターが3階で止まり2人は部屋へと向かっていた。 『舞…』 『お休みなさい…』 『舞…』 舞の部屋のドアが閉まり相川は立ちつくした。 舞…ーー! たっぷり5分経った頃ドアが開けられる。 『相川…、!! 相川さん!!どうして?』 舞の目から涙が落ちた。 『舞ちゃん待っていて良かった…』 相川はせつなく笑った。
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