《第1章・オネエ協定?》

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『後5分待ってて出てこなかったら諦めるつもりだったけど…』 相川はフッと哀しそうに笑った。 『相川さんあたし…隙をついて必死で逃げ出して優香や孝典くんや相川さんがいてくれて…だけど誰もいない1人きりの部屋に入ると隣人を思い出して… 怖くて…だから…ーー』 見上げて話していた舞の目から涙が落ちる。 『舞が落ちつくまで一緒にいてあげる、おいで』 わずか5分の間に着替えもしなかった彼女は部屋で立ちつくしていたのだろうか? 相川は冷蔵庫からビールを取り出し舞に見せたが彼女は首を振った。 彼は紙袋からガサガサと貰い物のクッキー缶を開封しテーブルに置いた。 『A書店堂スタッフからの貰い物だけど』 舞にウーロン茶の500mlペットボトルを渡した後、自らのも開ける。 『美味しい…喉渇いてた、甘い…クッキー』 はぁぁ‥と幸せそうな顔をしまた暗い顔に戻る彼女。 左腕をソファーの背にかけ指先をトントンと促すように叩く彼。 『クッキー気にいったのならなくなるくらい食べていいわ。 A書店堂からはサイン会の度に貰うから』 『そんな…相川さんの…』『食べて良いの』 チョコがけのサクサクしたクッキーはクルンと丸く巻かれロール状で、 人気の菓子メーカーのモノだ。 … …… 『女って甘い物が好きね、舞の顔が少しだけ変わった』 『あたしこのクッキー好きな味…』 『やっと笑ったわねーー、ここ最近笑顔すらなくて心配していたわ』 『相川さんあたし途中で逃げ出して、会社であの女に嫌味を言われそう…』 『顔を合わすの?』 『お昼くらいに時々、部署が違うから仕事には差し障りないの。 だけど会社内で会ったら…』 『舞が悪いわけないじゃない、そう言ってあげるから…』 『相川さん…』 相川はウーロン茶をひとくち飲み仕事用の棚からファイルを取り、ボールペン共々テーブルに置いた。 そのファイルには…ー。 《オネエ協定》 いつかサインしたあの協定用紙になる。 クッキーを少し端に寄せ相川はボールペンでサラサラと書き始めた。 『心配したわ、だからこそ良いわね?』 ※④お互いの部屋へは合鍵で出入り可能にする。 『なんで?』 『あたしが舞の部屋にいたら、引っ越しに行く前に引き留める事が出来たわけでしょ』 『出入り可能…』 『舞に怖い思いをさせない為に阻止する為に』 ※⑤悩み事は隠さない オネエ協定にまた2項目増える事になった。
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