《第1章・オネエ協定?》

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オネエ協定ファイルを棚に戻しソファーに座る相川を、舞がジッと見ていた。 『着替えないの?』 サイン会をしたスーツと靴は控え室で、自らの私服へと着替えてはいたが。 『舞がいるでしょ…』 『だったらあたし帰らなきゃ』 『不安にならない?1人きりで?』 隣人との出来事を思い出さないという事にはならないのだ。 『ううん…』 『…でしょうね、少し話さない? 河田の事気持ちわからないって想い断ち切れるの?』 『………』 『電話すら素っ気ない、舞よりも仕事仲間を優先する…仕方ないわ。 舞が吹っ切れるまでデートを約束してきてあげるから…』 『相川さんっ!』 『舞の気持ちをはっきりさせる為に必要でしょ』 『あたしの為…?』 “ううん!” 相川は首を左右に振った。相川克哉自身の為に…ーーー! 出来れば舞には後腐れなく未練なく前を向いて、 次の恋に前向きでいてほしいから! あたしを好きになって! 舞ちゃんっ! 口には出来ない相川はそんな事に苦笑する。 『あたしが河田とデートを約束してあげる』 それから舞の部屋にうつり相川は風呂場前で見守った。 『中に入ったりしないから』 『相川さん』 『ここにいる、ここにいるから安心してシャワー浴びてきなさい』 『ん…』 舞は女子高生のように幼く笑ってドアを開けた。 サァァ‥ シャワーのお湯が舞の体にまとうボディーソープを落としてく。 相川は中から聞こえてくるシャワーの音に耳をすませクスッと笑った。 『区切りをつけておいで、そうしなきゃ第2の恋は始まらない…』 *** 言葉どうり。 相川はアサヒコーポレーションの敷地外で舞の退社時間を待っていた。 【早めに退社出来る?】 彼の言葉どうり終業5分で舞は走ってきていた。 『あの女が出てきたら教えて』 今から合コンなのか気合いをいれたイケイケ女が見えた。 『おあいにくさま。 すべてあなたの思いどうりにならない事を』 相川克哉はそう捨てセリフを言い放ち不敵に笑った。 『嫌な事は自分に返ってくるという事もね』 かっこいいかも… 今の相川さんかっこいいかも… 舞の鼓動が速くなる。 かっこいいかも…
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