《第1章・オネエ協定?》

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『帰りたいのっ!』 舞は服を着ながら叫んでいた。 『高い部屋どうすんだよ!』 舞はバッグをとり財布から5000円を差し出した。 『セフレにならないセフレ持続?帰れば? A美呼ぼっかな~』 彼は舞の5000円札を掴んで電話をかけ始めた。 身なりを整えながら舞はそんな河田を見て部屋のドアへと歩き出した。 1階の部屋パネルは使用中の赤い表示のまま、彼女はそれを見て走り始めた。 ハァハァ‥と息があがる程に走り10分程で立ち止まった。 『パンプスで走らなきゃ良かった…ストッキングも伝染しちゃって…』 涙がポタリと落ちてアスファルトに染みをつくる。 しゃがんだ彼女の足元に男性ものの靴。 『彼女っ』 顔を上げるとそこには相川克哉が立っていた。 『探したわ…帰ろう…』 舞が道路の真ん中でしゃがみ込んで20分が経過していたのだ。 『探して?』 『そうよ、焼き肉店に行くと舞はいないし』 『来てくれたの?』 『舞を置いて帰るはずないでしょ』 『相川さんっ…』 涙がまた頬を伝う。 『河田の事だからこっち方面かと…来て良かった』 相川は手を差しのべた。 『こんな所に座ってると狼が狙ってくるわよ』 見渡すとニヤニヤと遠巻きに見ていた男が舌打ちをして去っていく。 あたし品定めされて? 相川さんが来なかったらあたし… 『帰ろう、舞ちゃん』 ん… 『アイスクリーム買って帰ろうか…』 ん… 2人は手を繋いだ。
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