《第1章・オネエ協定?》

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『行かなきゃ良いじゃないっ、決まり!』 『優香あたしもそうしたいけど噂で聞いた話が本当になったら嫌なの』 『あの女の頼みを断った同期が彼をとられたって話?』 『ん…』 『それを言われるとあたしも孝典とられたら嫌だもん…あたしも引っ越し手伝うわ、1人より2人の方が心強いから』 『だめ、優香にはあんな思いさせられない』 夜の電話でも憂鬱な話題を出さなければいけなかった。 そんな彼女は溜め息をつきながらドアに鍵をかけ出勤しようとしていた。 相川のお弁当は続けられていて今も彼女の前に差し出す。 『おはよう、お弁当今日はオムライスよ』 『ん…』 『ケチャップで愛してると書いてあるわ』 『ん…』 『そこは「嫌~」とか?あぁ、フフッ…舞はあたしの事…』 『んー…』 『舞?ねぇおかしくない?オッパイ触るわよ?ほらほらこんな風に…』 相川は右手で舞の左側の胸を覆う、淡いブルーのブラウスが彼の手によりしわが出来る。 『………』 『ねぇ揉んじゃうわよ?』『ん…』 彼は胸から手を離し彼女の顔を覗きこんだ。 『ねぇ心配事ありそうね?うつろな目をしちゃって化粧していてもわかるわ。 送って行こうか? 危なっかしいから…』 舞はそんな申し出も聞いてないかのように相川の横をすり抜けた。 『舞っ、送って行くわ』 車内でも言葉少なに心ここに在らず的な先ほどの舞のようで。 『…っと、舞っ制服が入ったバッグ忘れてる』 車から降りた彼女にバッグを持たせ、歩き出す後ろ姿を見ながら叫んだ。 『考え事しながら歩かないのよっ』 おかしい… 胸に手を当てると嫌悪感をあらわにするのに今朝はまるで心ここに在らずのよう… 舞に何かあった? 『克哉…克哉…克哉ったら!』 『えっ…何?』 打ち合わせで聡や編集長のいる出版社の一室にいた相川はハッとした。 『頼むよ…今日はおかしいよ…サイン会用に着るスーツどれにする?って聞いているのに』 『あ…』 聡・編集長は苦笑し顔を見合せ。 『心ここに在らず?』 舞を心配する相川はまさに恋する顔をしていた。
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