第1章

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(もうダメかもしれないな)  ふと、 そう思った。 それは、 きっと仕方のないことなのだと。  ずっと、 死ぬことが怖かった。 でも、 こうして極限まで体力を奪われると、 人は恐怖をあまり感じないらしい。  ただ、 心残りはある。  夫と息子。 私を育ててくれた両親。 私の大切な家族。 特に息子はまだ2歳。 母親を失うには幼すぎる。  私がいなくなったあとの家族を思うと、 心が痛んだ。  もし、 家族が幸せに暮らしているとわかれば、 安心して死ねるのに。  例えば、 私が死んでから5年後の世界で、 皆が元気に暮らしている姿を見れたらいいのに。 「いいよ~」  とうとう、 幻聴と幻覚が現れた。 モルヒネの副作用かな。  それでもいいと思った。
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