第1章

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「透明人間?」 「うん。 透明人間でいいね」  そんな願い事した覚えないけどな。 強引に話を進める息子をぎゅっと抱きしめる。 重さはないけれど、 温かい。 この世の終わりに、 神様は最高のプレゼントをくれた。  息子と戯れながら最期の眠りにつくのは、 悪くない。 「じゃあ、 透明人間でお願いしますね」  私が頭を下げると、 にやりと笑った息子が、 私の頬を両手で挟む。 「じゃあ、 いきますね~。 ぱおーん、 ばーばが、 ジャービルになっちゃった~」  体が軽くなり、 私は宙に浮いていた。 ぼやけていた視界が、 鮮明になっていく。  下を見下ろした私は、 硬直した。 そこには、 もう一人の私が寝そべっていたのだ。
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