第1章

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不治の病。 そう、これはきっと治る事のない病なんだ。 彼女を見るとドキドキして、心臓が痛くなる。 彼女と話すと知らず知らずにうちに涙が溢れてくる。 そんな僕を見かねて、知り合いの先生が薬をくれた。 『これを飲めば君は彼女とずっと一緒に居られるよ』 茶色の小瓶に入った液体。 匂いは甘ったるいキャンディーのような香り。 小瓶を振ると“チャプン”と水音がする。 『本当に彼女とずっと一緒に居られるの?』 僕の問いかけに『もちろん』と返事が返ってくる。 『彼女が他の男と一緒になってもいいのかい?』 先生の一言が引き金となって僕は小瓶の中の液体を一気に飲み干した。 液体が食道を通って行くのが分かった。 徐々に体が熱くなる。 溶けてなくなるんじゃないんだろうかって言うくらい。 苦しい。 助けて。 助けて・・助けて・・・た・・・・・・て・・・・・ 『どうして!』 彼女が泣き崩れている。 ううん。彼女だけじゃない。僕の親も、妹も、おばあちゃんも。 友達もみんなみんな泣いている。 僕はそっと彼女に近づく。 どうしたの?何があったの? そう問いかけたはずなのに声が出ない。 彼女たちの中心には、僕が居た。 真っ白な顔をして棺の中に入っている僕が居た。 彼女の肩に先生が優しく手をかける。 『そんなに泣いたら彼が悲しむよ』 僕はここだよ。 ここに居るよ。 ああ、僕は透明人間。
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