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今ではない時代…それは神話の時代から続く話の中の収束点、山田隆生達の前の時代。
時代は、平安。
軸になる人物は安部晴明。
陰陽師で最強の一人であるこの男は呪術だけではなく、音をも支配した。
そして友は風を扱える者だった。
友の名は上総行劉(かずさのゆきたか)。
二人は立場が違っていた。
二人の立場は陰陽師の宝と、雑兵の一人というものだった。
ではなぜ友と呼ばれるようになったのか。
行劉の方は陰陽師の宿舎の護衛と言ったものだった。
たまに晴明を見ることはあっても話しかけられず、ただただ護衛をしていた。
しかし晴明は行劉の資質を見抜いていた。
たまに感じるまだ荒々しいが確かな資質。
そして行劉が護衛につくたびに感じる懐かしき感覚。
それは過去、現在、未来を見通すでも感じたことのない安心感。
二人は少しずつ出逢っていく。
「上総!!またか!!おぬしはどうしてそう太刀が振るえぬのだ!!」
「すっすみません…しかし…私めはどうも太刀というものが苦手でして…槍なら多少なりとも経験があるのですが…」
「ほぅ…槍か、ならばその腕前わしに見せてみよ」
「はっはい」
そうして行劉はいそいで自室に戻り、槍を手にして訓練所に向かう。
その時に晴明を見かけた。
(晴明殿…この間もここで見かけたな。何を見ていらっしゃるのだろう)
そう考えていたら上官の怒鳴り声が鳴り響く。
自分を呼んでいる。
「あっ!!早くいかなくては!!また怒鳴られる…気が重いなぁ」
そういって走る。
「上総!!遅い!!上官をなんだとおもうておるのだ!!」
「申し訳ありません!!」
そういって上官はすでに槍を持って仁王立ちをしている。
平謝りをしている行劉。
「まぁよい。立て。構えよ」
「はい!!」
そういって構える。
(むっ?こいつ…太刀の時とはちがう。確かに経験はあるようだな)
「はっ!!」
そんな掛け声とともに槍が出る音、ボッと言って上官の顔の横を吹き抜ける。
「いやぁ!!」
そのまま踏み出し石突で腹を狙う。
しかし上官は右手で防ぎ、左手で縦になった槍を払いながら柄を行劉の肩にあてて石突を顔に当てながら右手を打ち抜く。
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