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咲桃が持ってきたのはとある巻物だった。
それには見たことのない文字で何かが書かれていたがなんとなく分かった。
そこには…ある男のことが書かれていた。
それは…大切な女性を奪われたということだった。
その時見せた、風の中にいる男の顔は…とても切なかった。
「う~ん…分からん。よく分からんが…晴明殿には読めるのですか?」
「いえ、読めるというより…」
「わかるんですよね~。なんか…ここの文は『風獅子』って書いてあるのがわかりますよ」
「上総、おまえ読めるのか?」
「いえ、わかるんです。不思議なんですけど」
「…ええ、その通りです。上総殿の言う通り、私も読めるのではなくわかるんです。」
一つ一つ単語を拾いながら文にしておいたのが別の巻物に晴明は書き示していた。
「これには今まで私が理解できた部分を文にして書き示してあります。しかし…風獅子という単語は初めてですね。上総殿、いまからお時間はよろしいか?」
「はい?」
「あなたがこの文をわかるのならばさらに何かわかるのかもしれないと思ったのですが」
「はっはい!!喜んでお手伝いさせていただきます!!」
そういって上官の許可を得て、手伝いをすることにした。
一か月後
「ぷはぁっ」
「ふふふ…行劉殿、お疲れ様です」
「い…いえ、しかしこの巻物ほんとに保存状態がいいんですね?」
「ええ…その行劉殿には真に申し訳ないんだが…それは一種の物の怪なんです」
「…はい?これが?またまた~晴明殿」
そう言っていたらぐにゅっと動くものを手のひらで感じた。
しかし…持っているのは巻物だけ…。
「…え?ま…真に…ですか?」
「はい…行劉殿は物の怪が駄目だと言っていたので黙っていたのですが…」
晴明は申し訳なさそうに言う。
「…うわぁっ!!」
晴明の元に走り寄り急いで巻物を差し出す。
「ハハハ…まぁそのように毛嫌いなさらないで。物の怪…妖(ばけもの)と言ってもこれにはほとんど意思はございません。ただ記録を己が身に刻むだけ。勝手に記録を取り込むものだとお思い頂ければ結構です」
晴明はそういうとひょいと持つ。
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