平安時代~義兄弟~

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「咲桃、酒を」 「はい」 そう言って奥へと消える。 「晴明殿昼間から酒ですか?」 「おや、私が昼間から飲んではいけませんか?」 行劉はいえ、と答え咲桃を待つ。 そのあいだにも庭に咲く花が風に舞って美しい。 見とれているとふふと晴明が笑う。 「なんでしょう?」 何故笑ったのかわからない。 そんな顔をしていた。 「いえ私の記憶の中にはあなたのように花を美しんで風に舞わせて遊んでいる童がいるのです。その子に貴方は大変似ている。そう…もしかしたら生まれ変わりなのかと思うほどに」 晴明は微笑ながら言う。 「童…ですか?」 「ええ…とてもいい目をした童です。誇り高き獣を従えその童は強くなる。そして…童は青年となり一人の女と出逢う。それはまるで運命であうかのように。そして…私達にも出逢い共に戦っていくことになったのでしょう。それはとてもとても悲しい戦だったのでしょうに。…その戦だけではありません。人は何かを守るために人の命を奪う。そして憎しみを育てて、やがて人は自らの毒で命を刈り取り、また刈り取られるのかもしれません…」 晴明は春が過ぎ行こうとしている日差しの中でそう言った。 まるでその戦を知っているかのように。 体験したかのように。 「あの…晴明殿…私めはそうは思えません。なんというか…どのような力だとしても、使い方ひとつなのだと思います。確かに人は人の命を奪う力を持っています。けどそれだけではない。人を助けることもできるのではないでしょうか?今吹いていた風にしても嵐になれば人々に害を及ぼしますがそっと吹くと花びらを舞わせ人の心を魅了する…。それと同じに思えます」 行劉がそう言うと晴明は驚いた顔をする。 しかしすぐに笑顔に変わった。 「…ふふふ、ふははははは!!たしかに行劉殿の言う通りだ。この晴明、陰陽師最強の一人として謳われているがゆえに、力の表面しか見えてなかった。いや笑ったりして申し訳なかった。許されよ。そして私の師になってほしい」 「…わっ私めがですか!?」
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