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「そう、貴方が私の師になっていただければこの上なき幸せでございます。そして教えていただきたいのは思想…つまりは考え方、捉え方なのです。この晴明呪術は賀茂殿に教えていただいたが、今のように力を嘆くことばかりでした。しかしあなたは私以上に力の使い方を知っておられる。その智恵を私はしりたい。…どうでしょうか?」
内心行劉はこの上ないほど動揺していた。
心臓が口から出るんじゃないか…いやもうでて転がっているんじゃないかと思うほど…。
しかし自分の胸のやや左よりから感じる鼓動が確かに心臓はここにあると告げていた。
「もちろん無償というわけにはいかないでしょう。たしか貴方は陰陽寮の兵になりたいのでしたね。ならば今以上に力をつけなければならないでしょう。その為の知恵を授けましょう。」
「いやあのその…どうしてもとおっしゃるなら…義兄弟では…いけないでしょうか?私めなのが師というのはあまりにも立場が違いすぎます。ですから…私めは兄弟がいないので…晴明殿が兄であるなら…」
そこまでいうと晴明は頭を下げた。
「ありがとうございます!!」
そしてきらきらとした目で行劉を見た。
「晴明様…お酒をお持ちいたしました」
「おお、咲桃、きいてくれ。行劉殿は私の義兄弟になってくれたのだ。これほどうれしいことがあるだろうか!!ははははは!!」
「晴明様!!また客人にご無理を言ったのではありませんよね!?」
「うっ…」
そういってたじろいだ晴明。
「この咲桃、晴明様に命を分け頂いたことは感謝の言葉さえ申し上げてもう足りない位です!!ですが一度そうして生まれたからにはあなた様の至らないところを補佐しなければなりません!!なのに貴方様ときたらいつもいつもそう―――」
…実は咲桃は晴明殿の姉ではないかと思うほど…怒られていた。
(なんだか…想像とちがうなぁ…この一か月見てて思ったんだけど…僕とかわらないなぁ)
「あ…あの咲桃さん。その辺で…せっかく持っていただいたお酒ももったいないですし」
「あらやだ。私ったら…お注ぎいたします」
そういって杯に酒を注いでくれた。
こうみたら…人間とかわならないなぁ。
そう思っていた。
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