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夕方の校舎は一見、綺麗で穏やかだ。
しかし僕にとっては時に危険が潜む場所となる。
ちょっと焦っていた。
いつも気をつけていたのに頼まれた用事が長引いて遅くなってしまったのだ。
「体調悪い時にこの場所と時間はやばいんだよ…」
人もまばらな校舎を慌てて走る。
風邪をひきかけてるせいか少し息切れしながら階段をかけ降りる。
突然、ピンと張りつめた空気に支配されビクリと立ち止まった。
どう考えても良くない雰囲気のもの。
まずい…
いつもなら気合いで跳ね返す事も可能だが、いかんせん具合が悪い。
「珍しいなー。まだいたのか」
聞きなれた無遠慮に明るい声。
瞬時に周りの空気が変わり和らいだ。
「…助かった」
最近気づいたのだけど、宇佐木は鋭い感覚を持ちながら無意識に周りへ強い影響を及ぼす。
暗い存在は近寄り難いらしく、彼が来ると消えてしまうのだ。
今さら震えが来た体を支えるように手すりを掴み、怠さと共に力なく階段に座り込んだ。
宇佐木は部活中らしくジャージ姿で階段を上がってくる。
確か陸上だったか…
印象通りの奴だなぁと眺めた。
「今日早く終わったから一緒に帰ろうぜ」
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