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静かな空間と本の匂い、緩やかに感じる穏やかな時間が大好きだ。
昼休みの図書室である。
今日は誰かに呼ばれたとかで、食べ終わった後は宇佐木と別行動をしている。
いつの間にか一緒に食事するようになっていたが、その前はよく図書室に来ていた。
考えたらあいつは友達が多い。
よく、すれ違いざまに肩を叩かれ軽口や挨拶を交わしている。
何故そんな正反対の奴と気付けば一緒にいるのか。
首を傾げ、まあいいかと本を読みはじめた。
周りの音すら意識から消えるほど本の世界は楽しい。
ページをめくりながら、ワクワクする展開に思わず笑みをこぼす。
ふと視線を感じて顔を上げた。
まばらに座る生徒達は静かに本を眺めている。
集中していたにもかかわらず感じた感覚が少し気になるけれど…
「気のせいかな」
時計を見上げて残り10分なのを確認すると本を閉じた。
静かに席を立ち、すぐ横にある窓から外へ何気なく視線を流す。
(ん?)
窓の下は校舎裏で、木々や花壇が並ぶ道だ。
そこによく知った顔。
知らない女子が何かを手渡す。
困ったように髪をかく彼が数秒後に頭を下げた。
女の子は弾かれたように見つめ、突然顔を伏せて校舎へ走っていってしまった。
普段なら見えないのに…
眼鏡外しとけば良かった。普通の交流ですら慣れてないため、凄い場面を目撃してしまいドキドキしてしまった。
ため息をついて窓から離れカウンターで本を借りる手続きをする。
名前を書き終わると眼鏡を外して胸ポケットにしまった。
あいつ相変わらずモテるよな。
人との関わり自体に免疫が薄い自分には衝撃が強すぎる。
平静を保とうと深呼吸をしてから廊下へ向かった。
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