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ざわつく大音量が耳に入った瞬間、ハッと現実に戻る。
なんてことない日常、いつもの風景。
「また飛んでた…」
複雑さをほんの少し含みながら、どこか残念そうに小さく呟く。
いつの間にか昼休みになっていたらしい。
楽しそうにお弁当を広げながら話す女子や、欠伸しながらダルそうに食堂に移動する男子が目に入った。
「椿ー、飯行こ」
ぼんやり座ったままだった僕の肩へ、いきなり無遠慮な奴が後ろからのしかかってきた。
「…だから椿じゃなくて名前あるんだけど。草間だって何回言えば解るんだよ」
押された勢いのまま机に突っ伏し、眉を寄せて顔だけ横に向けると視界には奴の能天気な顔があった。
「知ってるけど、椿の印象強いんだもん。あだ名でもいいじゃないか。それより飯」
まるで、動物に例えるならライオンの子供のよう。
大きな体で太陽のように笑いながら、人の都合も聞かずに急かす奴の名前は…
「ライオン!どうでもいいから退け。重い!」
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