日常

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つぶされたままでは息苦しくなってきた。 少し押し返すも諦め、文句をぶつけるように声をあげるが。 「ラ…?宇佐木ですけど…ライオンより可愛いウサギ」 真顔で返った返事に脱力して再び突っ伏した。 冗談でもなく本心から言ってるのが解るだけに。 「相変わらず面白いなぁ。あいつら」 「またやってるね」 「てか、何で草間は椿って呼ばれてんの?」 「さぁ…」 大人っぽいのにぼんやり不思議な雰囲気の草間と、明るくてあっけらかんとした宇佐木。 周囲から面白いコンビとして密かに注目されていた。 生徒達の楽しい会話に毎度一役買っているらしい。 そんなこととは露しらず 。 ようやく退いた宇佐木の頭を軽く叩き、わあわあ言い合いながら食堂へ向かうべく教室を出た。 中庭を通り抜けようとした時、ふと呼ばれた気がして視線を向ける。 「あ…」 そうか、と言葉にはせず無意識に立ち止まる。 視線の先には椿の木があった。
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