ショコラキス

8/9
前へ
/11ページ
次へ
「菜緒のせいじゃないから」 チュッ、 ふれた唇にぎゅっと智一さんに抱きついた。 ……早く。 早く、大人になりたい。   しばらくすると智一さんは再び眼鏡をかけ、 脱いだジャケットを着た。 眼鏡をかけた智一さんは さっきまでの甘い顔と違い、 冷たい顔になってしまう。 「……今度はいつ、会えますか?」 俯いてジャケットの裾を掴むと、 あたまぽんぽんされた。 「しばらく出張、ないはずだから。 明日も寄れたら寄る。 ……そうだ。 週末、泊まりのおいで。 母さんたちには云っておくから」 それでも機嫌の直らない私に 智一さんはため息をつくと、 ぎゅーっと抱きしめてくれた。 「困らせない」 「……はい。 ごめんなさい」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加