1:兄さんからの手紙

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さて、そんな兄とは、一体どんな人物なのか。 喧嘩っぱやくヤンチャなことと、シスコンであることを除けば、割と普通な青年だった。 大学を卒業するまでは…。 卒業後の兄さんは、国立の4年制の大学を出たにもかかわらず、「俺はラクをして金儲けする!」と断言して就職せずにパチプロになり、株や競馬の山師となった。 これがいっそどん底まで失敗して人生の辛酸をなめれば良かったのに、どうやら兄さんには神がかり的な運がついてたらしくて、人生ウハウハに暮らせそうなぐらいの潤沢なお金を本当にラクして稼いでしまった。 そして半年前に「働く必要はなくなった。俺はもっと世界を知りたい」と旅に出るようになった。 ちなみに『世界』とデカイことを言ってたけど実際の活動範囲は国内限定。 兄さんは飛行機が怖くて乗れないのだ。 それからというもの、兄さんと両親間の関係は悪化の一途を辿り、今ではほぼ勘当同然となっている…。 * 教室の窓際には麗らかな小春日和の太陽の日差しが差し込んでいた。 背中に受けるその暖かな光と熱に似て、抑揚に乏しい古文教師の声が耳に心地よい。 私はこっそり机の中から今朝奪取してきたばかりの封筒を取り出して中身の手紙を抜き出し、立てた教科書に隠れて読み始めた。
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