シスコン兄と私の距離

１：兄さんからの手紙

『やっほー。ミケ。
俺は今、屋久島に居る。あの有名なもののけ姫の島だぜ！
高い山にも登って鹿にも猿にも会った。
もちろん屋久杉も見た。
屋久島の山の中に必ずいると言われてる、あの木霊ちゃんも写真に撮れたんだ。
もののけ姫に出てくるやつみたいに超カワイイんだ。
なかなかレアだから見といてね』

同封されている写真を見てみる。
綺麗な青々とした山の中の樹ばかりが映ってる写真。

（――ん？木霊ってどこに映ってんの…？）

写真の隅々まで見ても見つからず、首を傾げる。

いつもどおりながら、肝心なものが映っていない…。

兄さんが送ってくる写真はいつもこうで、「美味しいアワビだ！」といってフグの写真だったり、「初日の出だ！」と言ってアメリカ軍の空母が映ってたりする。

もはや故意にしか感じられない。

毎度こんな内容だが、兄さんは、気まぐれに旅先から私宛てに手紙をよこしてくるのだった。