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「何見てるの?」
窓の外を見ていた僕に川口さんは話しかけると、僕の前の席の椅子に座った。
「いや、綺麗だなって」
「ああ、ここから見える海はね、この町で一番なの」
「へえ、そうなんだ」
「ねえねえ、名前、加山 祐一君だったよね。前はどんなとこに住んでたの?誕生日は?」
少し面倒くさい。
「ええっと、都会かな。ちょっと中心からは離れてたけど」
「こっちきてみんなと一緒に話そうよ。みんな君に興味津々だよ」
「別にいいよ。まだ海見てたいし」
変だと思われただろうか。
「夕美、何やってんの」
「今行く!それじゃあ、またいつでも声かけてね」
彼女が微笑んだ。すごく綺麗だった。面倒だと思った自分が不意に馬鹿らしくなった。それくらい、綺麗だった。僕は少しの間、彼女の後ろ姿を見送った。
それからは次第に周りとも話すようになった。別れてしまう時の悲しみを忘れた訳では無いけれど、このクラスの人たちはみんなフレンドリーで、話していて楽しかった。
そうこうしていると夏休み直前になった。課題がたっぷりと出されて生徒たちが落胆の声を上げる中、僕はまた海を見ていた。地平線の端が少し下がっていて、地球は本当に丸いんだなあと感じられる。入道雲が海から煙のように立ち昇り、絵になる美しさだ。
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