あの日 あの時。

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『虚血性心筋梗塞による突然死について』  急性心筋梗塞は予知が難しく、ほとんどすべては青天の霹靂のごとく襲いかかって来る。 その疼痛は激しく、胸骨の後を熊手で掻き毟られるとか、焼火箸を喉から胸に突き立てられるなどと形容される胸内苦悶を伴う。疼痛は左肩から頤、左腕に放散することもあり、30分は持続するから、冷汗、嘔吐、ショックなどがみられ易い。 そしてその40%程度の例はそのまま、あるいは救急車で搬送中に死亡する。 病院に着く時に死亡しているので“death on arrive"とか“dead on arriva1(DOA)"(到着時死亡とか死亡到着)といわれる。 この場合の突然死は、心室筋のポンブ作用の消失(血液駆出力の極端な減弱)や重篤な致死性不整脈によって斉らさる。心室頻拍・心室細動が反復出現する現象を電気嵐(electrical storm)というが、治療は難渋する。 このような重症例でも最近は生存に漕ぎ着けるほど治療法が進歩したが、社会復帰率は2%ほどしかない。 急性心筋梗塞は前兆の症状がほとんどない場合が多い。 死因を一般に分かり易い心筋梗塞としないでなぜ虚血性心疾患とするのか。 虚血性心疾患の患者は心筋梗塞の初期が多く、比較的短時間で死亡するため最も鋭敏な心電図検査で心筋梗塞の波形を見る間もないこと、解剖で梗塞巣すなわち心筋の壊死巣を確認できないなどの理由で、原則としてこの病名は使わない。 一般に梗塞となるには心筋虚血が30分以上続くことが前提となる。 なお、突然死亡するという状態を強調する場合に「虚血性心不全」の診断名もよく用いられるが、「虚血性心疾患」と同じことです。
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