プロローグ 『ヤンキー探偵・秋虎斗真』

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彼女が泣き止むまで五分。 さらに、追加で七分。 沈黙のまま気まずい空気が二人を包み込んでいた。 幸い、今日の講義は昼までなのでゆっくりとしている余裕はあったが、 そんな余裕があったとしても秋虎には耐えることが出来なかった。 「そういやさ、アンタの名前を聞いてなかったな」 苦し紛れに秋虎が話題をひねり出した。 「ごめんなさい、自己紹介まだでしたね……。  私、佐伯柚葉(さえき ゆずは)と言います」 「佐伯? ああ、ミス長山大学の?」 『ミス長山大学』は秋虎も心当たりがあった。 学内一の美女を決めようというどこにでもありそうな企画だ。 こんな、ちっぽけな学内イベントでも優勝してしまうと一役有名人へと成り代わる。 周囲の白い目線はこれかと納得する秋虎だった。
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