第1章

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「あれ~?君は僕の学生だっけ?」 おい!覚えてないのかよ?! 「違います!昨日怪我させられたものです!!私、椛島風香と言います」 あ~!!と思い出した~みたいに笑ってる場合か?! 「これは失礼。ん~昨日は申し訳ない。時間がなくて、え~っとお金かな?治療費?まぁそんなひどい怪我じゃなかったようだけど……」 失敬な!?まるでお金目当てみたいに!! 「あの、あまりに失礼ではないですかっ?!あの場に置き去りにするなんて!」 「いや~。時間なかったもんで失礼。まぁ座って何か冷たいものを買ってくるよ」 そういうと、ホコリを被った本の隙間からホコリを被ったソファーっぽいものが現れ、それを彼は手で払うと「どうぞ」と部屋を出て行った。 仕方ないから座ってやろう。話しくらいしなければならないし。 数分で彼はペットボトルの麦茶を二本持ってきた。 「え~っと治療費だっけ?」 いちいち腹の立つ。まずはあるでしょうに!!やることが!! 睨み返していると彼が首をかしげた。 「あ~!昨日はすみませんでした。傷の具合はいかがですか?幸い大したことないように見えますが」 なんなの?この心無い、全くない言葉運びは?!怒らせたい訳?! 「はぁ、たんこぶ程度で済みましたけど、就職活動中でして笑われました。それに、一応嫁入り前なんですが!その心無いお詫びってわざとですか?」 「失礼!心無いつもりはないのだけど、ひと言多いようで申し訳ない」 これは本当に悪いと思っている言葉運びな気がした。 気まずさに沈黙が流れる。 彼は「ピン」ときた人でもあるのだ。 背は180はあるだろう。すらりと伸びた足。無造作な髪(無頓着かもしれないが)。一重にいかにも日本人なさっぱりとした顔立ち。けしてイケメンではない。でも、落ち着くその空気感がドキドキさせるのだ。 さすがに黙ってるわけにはいかない。 彼は、沈黙が得意そうだ。全く心が揺れていないのが分かる。静かにお茶を啜っている。 「あの。私は別にお金が欲しくて来たんじゃありません。あなたが失礼だったから、その、一喝と言いますか……」
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