第1章

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じぃっと彼は覗いて来る。 そしてしばし考える。何か思いついたように、急に手を伸ばしてきた。 えっ?えっ?!いきなり?! たどり着いたのは「おでこ」 「痛みますか?もしよければ友人が脳外なので今から行きましょう。MRくらい取ったほうが。お嫁入り前ですしね」 にやりと笑うと私の手を取った。 え?!たんこぶくらいで?!ヤダ!恥ずかしいでしょ?! 「だ、大丈夫です!!あ~謝っていただけたらそれで!!」 思い切り手を払いのけると、もじもじとしてしまった。 「そうですか~?ん~?大事な就活を邪魔したわけですし、お嫁入り前の大事なお嬢さんですし、傷でも付けたと思ったら今頃申し訳なくて……」 「あ!いえ!事故ですし、故意に……」 はっとして、聞こえてきたのは、クックッと喉を鳴らす笑い声。 コイツ!私で遊んでやがる!!立ち上がって、ペットボトルのお茶を頭からドポドポとかけてやった。 「あら。暑そうでしたので、これで失礼しますね。人寄センセ~。また来ます」  * * * それから、私は時間を見つけては彼の元を訪れた。 彼の研究生達は、やれ彼女じゃないのか?やれお金を取り立てにきてるとか言いたい放題だったが「ざまあみろ!」である。 初めの頃こそ、缶コーヒーくらい出してくれたが……。 「すまんが、コーヒー入れてくれる?そこにメーカーあるし豆はさっき買ったのがあるから洗って煎れてもらえる?」 って、彼の准教授室にそっと入っても振り返りもせず私に指図するようになった。 つい、コーヒーやらお茶やらを準備してしまうのだが、 このままではいけない!! 「コーヒー入りましたけど、飲みますか?かぶりますか?」 静かに聞くと、背を向けたまま 「ん~。飲むよ。そこに置いておいて、冷める前にはちゃんと頂くから」 抑揚もない、淡々としたものである。 ぶっかけてやろうか?! なんだろう、向き合って話したのは麦茶ぶっ掛けたあの日だけじゃなかろうか? 何度も言う!このままではいけないのだ! あれから半年。私だって、もう時期社会人だ。 ここに来れないのだから。
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