0人が本棚に入れています
本棚に追加
あの二人なんなんだ。
でも……。
一晩考えた。眠れなくて、朝になって、昼にあの自販機にたどり着いていた。
「「いらしてくれたのですね」」
二人がユニゾンのように微笑んで言葉を発する。
「あの、私、どうしたら」
ニコリと笑うと、二人は説明を始めた。
「まず、飲めばいいのですね。それで、榊さんに付いて行って研究室に入る。それから、物を落としたり、怪奇現象みたいにすればいいと」
「「そ~です!飲み込みがいい!さあ!でははじめましょう風香さん!」」
私がカバンから出した透明人間になる薬を、黛さんがグイと口元に近づけると傾けた。
数分後、二人が頷いて「みえませんよ~」と小声で言った。
そして今、私は榊さんの背後について准教授室の前に居る。
「では行きますよ。私が研究室の学生の振りして人寄先生の部屋に入りますから、付いてきてください。私は退出しますから、そのままあとはお好きにやっちゃってください!!楽しみにしてますね!!」
知的な女性の口からこぼれるザックリとした言葉は心もとないが、もう見えない人になっちゃった以上腹をくくった。
ノックの直前思い出したように榊さんが呟いた。
「そうだ!声。声だけは消せませんから。気をつけて」
コクコクと頷くと、榊さんはニッコリ笑って右手を軽くドアに当てた。
――コンコン。
「失礼します。先生開けますよ」
「どうそ~開いてるよ~」
相変わらず、緩い。
「お借りしていた資料、お返しに上がったんですが。この辺りでいいですか?」
「あ~その辺どこでもいいよ」
また振り返りもしない。まったく。毎回私が整理しても三日もすると元通りの山になるわけだ。
小さく溜息をついていると、私など居ないように榊さんは出て行った。
ぼんやりと立ち尽くし、声を殺して、お嬢様がいらっしゃるのをじぃっと待った。
最初のコメントを投稿しよう!