第1章

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あの二人なんなんだ。 でも……。 一晩考えた。眠れなくて、朝になって、昼にあの自販機にたどり着いていた。 「「いらしてくれたのですね」」 二人がユニゾンのように微笑んで言葉を発する。 「あの、私、どうしたら」 ニコリと笑うと、二人は説明を始めた。 「まず、飲めばいいのですね。それで、榊さんに付いて行って研究室に入る。それから、物を落としたり、怪奇現象みたいにすればいいと」 「「そ~です!飲み込みがいい!さあ!でははじめましょう風香さん!」」 私がカバンから出した透明人間になる薬を、黛さんがグイと口元に近づけると傾けた。 数分後、二人が頷いて「みえませんよ~」と小声で言った。 そして今、私は榊さんの背後について准教授室の前に居る。 「では行きますよ。私が研究室の学生の振りして人寄先生の部屋に入りますから、付いてきてください。私は退出しますから、そのままあとはお好きにやっちゃってください!!楽しみにしてますね!!」 知的な女性の口からこぼれるザックリとした言葉は心もとないが、もう見えない人になっちゃった以上腹をくくった。 ノックの直前思い出したように榊さんが呟いた。 「そうだ!声。声だけは消せませんから。気をつけて」 コクコクと頷くと、榊さんはニッコリ笑って右手を軽くドアに当てた。 ――コンコン。 「失礼します。先生開けますよ」 「どうそ~開いてるよ~」 相変わらず、緩い。 「お借りしていた資料、お返しに上がったんですが。この辺りでいいですか?」 「あ~その辺どこでもいいよ」 また振り返りもしない。まったく。毎回私が整理しても三日もすると元通りの山になるわけだ。 小さく溜息をついていると、私など居ないように榊さんは出て行った。 ぼんやりと立ち尽くし、声を殺して、お嬢様がいらっしゃるのをじぃっと待った。
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