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何で鳴らないの…。
うっすらと目を開けた千穂の視線の先には、天井近くで元気に動く壁架けのシルバーの電波時計。
短針は、すでに7と8の真ん中に陣取っている。
「まだ間に合う!」
跳び起きながら横目で睨んだ枕元の目覚ましは、長針を微かに震わせながらも先に進められずに哀れな姿を呈していた。
「何もこんな日にぃ!」
夜中に電池切れなんて、有り得ない!
叫びながらクリーニングの袋を引き裂いて、真っ白な夏服ブラウスを引っ張り出す。
ああ、今日から6月なんだ。
ブラウスのボタンを上から二つだけとめて、ホック留めの青地に白ストライプのリボンを襟の裏に引っ掛ける。
そのままスカートと靴下を左手にひっつかみ、右腕に鞄を抱えて自分の部屋を出ると、滑り落ちるように階段を下った。
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