恋文

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また桃色のしだれ梅の咲く季節がやってきた。 永澤総一郎は寺の境内に咲いている 桃色のしだれ梅を眺めながら 「今年も可愛らしく咲いたなあ」と小さくつぶやく。 華道の師範をやっている総一郎には想い人がいた。 同じ華道の道に生きる4歳年下の菊池桃花と言う女性だ。 総一郎は桃花とこの桃色梅の木の下で出会った。 総一郎の一目惚れだった。 やがて二人は付きあう様になり恋文を交わす中となる。 そして、穏やかに愛を育んでいた。 結婚の約束まで交わしていたのに、ある日突然桃花からの恋文に異変が生じた。 「愛する、総一郎さん。私はまだ、あなたに愛される資格がありません。今日から2年間の間にあなたにふさわしい女性になる為に修行に行ってきます。ですから、私を愛しているのなら、待っていてくださいますか。必ずあなたのもとへ帰ってきます。桃花」と書かれてある恋文を総一郎が最後に受け取ったものだった。
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