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今総一郎の胸元に入っているのがその恋文だ。
総一郎は胸元に手を入れて大事そうに手紙を出してくると目を追って読んでいく。
読み終ると大きなため息を漏らす。
そして憂いのこもった瞳で桃花と出会ったこの場所の桃色梅を見つめているのだ。
「桃花あれからもう、2年の春を迎えるのに君は私に恋文をくれないんだね。私は、ずっと待っているのに。君には私の恋文が届いているのだろうか。確か、こう書いたよね。私は君を愛している。だから、君の事をずっと待っているよと文にしたためたんだよね。なのに、君からの文は一向に届かない。私の事はもう忘れてしまったのかい。私は悲しいよ。桃花」と呟いている。
この呟きももう2年越しになる。
最後に総一郎は
「桃花、私は、君が必ず帰ってくると信じてずっと待っているからね」と呟くのだった。
そして季節は巡りまた、桃色のしだれ梅の花の咲く季節がやってきた。
総一郎はお寺の桃色梅を眺めながら、桃花に思いをはせる。
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