恋文

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あなたに出してしまえば、きっとあなたは会いに来ると思ったのでしょうね。あなたの顔を見ると気持ちが揺らぐと思ったのでしょうね。でも結局は桃花はあなたへの思いを恋文にしたためたまま出すこと叶わずにこの世を去ってしまったのです。桃花は息を引き取る時に私に、これを託しました」とサクラは大きな箱を総一郎に渡した。 「この箱の中に桃花の恋文が入っています。桃花はこの恋文をあなたに燃やしてほしいといっていました。この恋文を燃やして、桃花の事を忘れてほしいと、新しい恋をしてほしいと願っていました。これが桃花の気持ちです。私は桃花の気持ちを伝えにやって来たのです。ではこれで失礼します」と言うとサクラは踵を返して帰っていった。 その場にたたずみ総一郎は箱の中身を見た。 桃花の字で書かれている恋文が沢山入っていた。 「そうか、桃花なぜ私に言ってくれなかったのだ。私は君がどんな姿になっても君を愛していたよ。ずっと君の傍に居たかったのに」と呟く。
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