第1章

2/2
前へ
/2ページ
次へ
夢? 妄想? 人より、ちょっと丸い頬っぺたを摘まんでみる。 (……うん。痛い。) とりあえず夢じゃないと。でも、この状況は何? どんな状況かを一言でいうと。 空中に浮かんでます。私。 山崎 咲(ヤマザキ サキ)15歳。 中3。 さっきまで、夕飯を食べてお風呂に入って自分の部屋で受験勉強をしてたはず。 うん。服装は、記憶通り上下いつもの部屋着。 時間は……分かんないけど、夜。 下に見えるのは、いつもの通学路。コンビニの横には美容室がある。 フワフワと軽い体で少しずつ下に降りる。通りにはたまに車が行き交うけれど歩道に人通りはない。 思ったように動いてくれない体で美容室前の歩道にもう少しで足がつきそう。もがくように足を伸ばす。 不意にコンビニから自転車が飛び出してきた。 ( っ ……ぶつかる!) 咄嗟に目を瞑り前に出した手には、何の衝撃もなかった。 振り返ると、さっき目の前に飛び出してきた自転車の後ろ姿。 運転している若い男性は何事もなかったように遠ざかっていく。 何事もなかった……ぶつからなかった。 ふと、自分の手を見る。 「……透けてる?」 パーに広げた手のひらの下がうっすらと見える。手のひらだけじゃない。体も、いつもの部屋着も、明るいところで見て気づいたけど私は、透けている。 もう一度、頬をつねってみる。 「痛い…」 呟いてみるけど、この声も透けて誰にも届いていないだろう。という予感。 (あっ…)
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加