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「今の僕のように魂の一部を此方の星に映すのさ。」
「だから、どうやって…」
「いつもみたいに目を閉じて眠って。その時僕がその一部を連れて行くから。」
私は言われた通りベッドに入り、一度眠りについた。
体がふわふわする。
よく見ると自分の体が透けていている。
「夢見てるみたいだね。」
青年に手を引かれながら光の路を歩く。
「君達が普段見てる夢は幻の方だからね。
でも、本当に此方に来ていることもあるんだよ。
」
「そうなの?憶えてないなぁ…。」
「無理もないさ、その時の記憶は幻に消されてしまうからね。」
「どうして?」
「それは、地球だからさ。」
(―――――?)
辿り着いた光の門が優しく開いた。
其処は、とても懐かしい場所だった。
初めて見た気はしない。
とても穏やかで暖かい、私が想う楽園そのものだ。
実体になった青年に誰かが話しかけている。
その人は今、透けている私には気付けていないようだ。
少し寂しさを感じていると青年は私に言った。
「どうする?このまま全部の魂を持ってきて此方に還ってくるかい?」
私は少し悩んだ。そして、
「少し、待っててもらってもいい?」
何故か、そう思った。
とても、居心地がいいのに。
けれど遠くで、誰かが呼んでいる気がして。
「うん、何時でもいいよ。
もう、還り路はわかったよね。」
「うん、どっちもね。」
そう言うと青年は笑顔で応えた。
「ありがとう。」
そして、数年後。
私は私と似たような透明な人と出逢い、共に日々を過ごしていた。
そんな或る日、
「そろそろいいかもね。」
何気ない言葉だった。
「うん、そうだね。」
何の事かは聞かないまま、そう応えた。
私達はもう、わかっていた。
恐れはない。
ただ穏やかに、深い眠りについてゆく。
「さぁ、還ろう。」
それは、とても優しい目醒めだった。
私達は其処にいた。
地球での姿ではなく、透明だった本当の姿で。
あの頃と変わらない、美しい世界。
あの青年が笑顔で迎えてくれた。
「やぁ!おかえり。みんな待ってるよ!」
それは、とても優しい光だった。
あぁ、新しい幸せが、
始まる。
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